Towards a New Media Theory: Workshop Transnational Knowledge Production, April 28 2018

This workshop is either in Japanese or in English. No translation available.

新しいメディア理論の構築に向けて:トランスナショナルな知的ネットワークを背景に
Transnational Knowledge Production Towards a New Media Theory

Skype discussion for magazine 5: Mori, Zahlten and Yoda

 

Date: 15:00-17:30 April 28 (Sat) 2018                  2018年4月28日(土)15時~17時半
Venue: Tokyo University of the Arts, Senju Campus Lecture Room 1 東京藝術大学千住キャンパス第一講義室
Speakers: アレクサンダー・ザルテン(ハーバード大学)Alexander Zahlten (Harvard University)
      水嶋一憲(大阪産業大学)Kazunori Mizushima (Osaka Sangyo University)
      毛利嘉孝(東京藝術大学)Yoshitaka Mori (Tokyo University of the Arts)
Chair: 水越伸(東京大学) Shin Mizukoshi (University of Tokyo)
 Language: 日本語および英語 Japanese and English 

Organizer: 日本マス・コミュニケーション学会 Japan Society for Studies in Journalism and Mass Communication
Co-Organizers:
『5:Designing Media Ecology』編集室   Magazine 5 Editorial Room
ポストメディア研究会 Post-Media Research Network

Abstract:
21世紀に入って私たちを取り巻くメディア環境は大きく変容した。デジタル化がもたらしたインターネットの普及とメディアのインテリジェント化、そして携帯端末の普及と液晶技術の発達がもたらしたスクリーンの都市空間における増殖が、私たちのメディアスケープを大きく変貌させた。急速に進んだグローバル化や産業構造の変容は、資本主義の生産様式を再編し、メディアをめぐる権力関係と主要なアクターを一変させた。そして、政治的に観点から見れば、アメリカの相対的な影響力の低下とトランプ政権の台頭、BRICsの台頭、BREXITの衝撃、アジア・アフリカの新興諸国の急速な発展、そして各地域で高まるナショナリズムなどが、メディアの変容に呼応するように起こっている。

このような状況の中でメディア研究も大きく変化しつつある。何よりもメディア研究が研究対象としてきた「メディア」の定義や社会的な条件が変容した。メディアは、もはやテレビや新聞のように狭義の「メディア」に留まることができない。メディアは微粒化し、分散し、液状化し、私たちの生活のあらゆるところに、そして身体にまで浸透しつつある。このような状況において今日どのようなメディア理論が構築できるのだろうか。

本研究会では、こうしたグローバル化とデジタル時代におけるメディア理論がどのようになりつつあるのか、あらためて議論しようというものである。

本企画にあたって考慮したポイントは以下の三点である。

第一に考えたいことは、「メディア」が変容し私たちの生活の重要なインフラストラクチャーになることによって、メディア研究がもはや狭義の「メディア」の研究に留まることができず、広く現代社会の分析となりつつあるということである。特にここでは、資本主義と呼ばれる経済制度が、ネットワークやコミュニケーションなど非物質的な商品や労働が経済の中心的な要素になるにしたがって、どのように変化したのかということに注目したい。

第二に、この新しいメディア研究において、これまで人文系や社会系、あるいは哲学、文学、歴史学、社会学、文化人類学、経済学と伝統的に分割されていたディシプリンが、メディアという新しい研究対象を考察するにあたって再編を余儀なくされている。特に今回の議論では、かつて批判理論、(ポスト)構造主義、ポストモダン理論と呼ばれていた人文系の議論が現在のメディア研究や資本主義分析にどのように援用され、発展しているのかということに焦点をあてたい。

第三に、こうした作業はこれまでメディア「理論」と呼ばれていた体系の西洋・男性・テキスト中心主義的な傾向に対する批判を要請する。たとえば日本のメディア研究において、理論は主として欧米の男性が書いたテキストであり、「日本のメディア」の研究はしばしばその理論の単なる応用の場、ひとつの「事例」研究に閉じ込められてきた。アジアをはじめとする非西洋圏は、今ではメディアやそれに関わる産業や文化の大きな生産と消費の空間となっている。と同時に、メディア環境の発展は、もはや私たちの活動を物理的・地理的な制約から解放しつつある。よりトランスナショナルな批判的な理論はどのように構築されるのかを考える時期に来ているのだ。

すでにこうした問題意識を共有したプロジェクトはすでにいくつか進んでいる。水越伸、毛利嘉孝、佐倉統らが出版しているバイリンガルの独立系雑誌『5:Designing Media Ecology』では、2018年3月出版の8号で「新しいメディア理論へ」という特集を組み、そうした動向を伝えている。毛利嘉孝、伊藤守、大山真司、水嶋一憲、清水知子らが組織する「ポストメディア研究会」では、18年1月にInternational Symposium “Towards Post-Media Studies in Asia”を開催し、スコット・ラッシュ、アレクサンダー・ザルテン、アンソニー・ファン、水越伸など30名の国内外の研究者を集め、かつてフェリックス・ガタリが提唱した「ポストメディア」という概念を中心に現在のアジアのメディア研究の状況についての活発な議論を行った。

国外では、2017年ハーバード大学でWorkshop “Media Ecologies in East Asia”、そしてSymposium “East Asian Media Studies”が開催され、デューク大学出版からマーク・スタインバーグとアレックス・ザルテンが編集した、日本のメディア研究の理論史を再評価する論文集 Media Theory in Japan (2017: Duke UP)が出版された。

これらのプロジェクトはたがいに呼応し合い、トランスナショナルなネットワークを成しながら、新しいメディア研究、メディア理論を育みつつある。それらはいかなる相貌を持つものなのか、この研究会で議論をしていきたい。